八月のある日。
昼間の強烈な暑さが和らぎ、日が暮れてやっと外に出られそうな気温になった頃、
ベランダで植物に水やりをしようと葡萄の木の方に目を向けると、そこに緑色のむくむくした虫さんを見つけました。
このごろ葡萄の葉っぱがところどころ齧られたように穴が開いたり欠けたりしていて、これは虫に食われたか病気にかかってしまったかと気にしていたところでした。
ゆっくりとした動きに、黄緑色のぷくぷくした胴体。
ピンと立った尻尾は赤色で、葡萄の葉柄の赤と似ています。
自分の体の色と同化しやすい植物のある場所まで遠くからやって来たのか。
それともこの場所で生まれて私の知らない間にちょっとずつ成長していて、
目に留まる大きさにまでなったのか。
一匹の芋虫が葡萄の葉を全部食べつくすこともないだろうし、しばらく様子を見ることにしました。
うまくいけば蛹になって、どんな姿に変わるか見れるかもと期待しつつ。
次の朝。
水やりをするのに芋虫に強い水圧でざあざあシャワーをかけないように彼がどこにいるのか探していると…
前日のすがたから一変して黒いぶちが連なった模様に全体的に暗いこげ茶のような色となって、葡萄とブルーベリーの葉の間にしがみついているのを見つけました。
このままここで蛹になって、羽化する日も近いのかもしれない。
数日間見守ってあげよう、と思い、日が暮れ登り、翌日の朝、
水やり前に芋虫のいた場所をのぞいてみました。
そこには茶色いカマキリが!!
しかもお腹が膨れて反り上がっているように見えます。
葡萄の木をよく探しても、芋虫はいません。
おまえたべたな>< と心の中でカマキリをせめかけましたが、弱肉強食の世界。
生きていくために自分より弱いものを捕食してエネルギー源に変えることは私も毎日しているのだし、
かわいい芋虫を食べたカマキリを憎むのなら、私の方がより多くの尊い生き物たちの命を奪って二十七年も生き続けているわけです。
それによく見るととてもきれいな形をしたカマキリです。
目の黒い点は不思議にくるくる動いているし、水やりで顔についた水滴を自分の手で拭ったりします。
彼女はこの場所が気に入ったらしく、それから数日間、今日も葡萄の木とブルーベリーの木あたりに住んでいます。
フランス語でカマキリは La mante religieuse 。
どうしてreligieuse (宗教の/敬虔な)なのか友人に聞いたところ、手を合わせてお祈りしているように見えるから、とのことでした。
カマキリのメスが交尾相手のオスを食べることがあると話に聞きます。
不思議な生き物だなあと思います。
しばらくうちのベランダで暮らすようなので、この敬虔と呼ばれる虫さんを観察したいと思います。